レモン

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レモン (9.5 x 10 cm)。2日くらい手の中で転がしている。

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気持ちが落ち込んだとき、青空文庫で梶井基次郎の檸檬を読むことにしている。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000074/files/424_19826.html

「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧さえつけていた。」から始まる文庫本9ページくらいの短い小説。憂鬱と焦燥に駆られ京都の街を彷徨う「私」は、立ち寄った果物屋で舶来物のレモンを買い、色、香り、冷たさ、重みを感じるうち、不思議と心穏やかになっていく。「私」はそのまま繁華街の高級書店に入り、美術の棚で画集を積んで山を築き、その山の頂きにレモンを放置して去っていく。

という、筋を書き下すと「一体...???」としか思えない小説。だけど、読んでると、不思議と心が落ち着いてくる。もしかしてこれが「めっちゃわかる」という感じなのか...。

そんなに落ち着くならいいな、自分もやってみようと思って、近所の果物屋でレモン (カリフォルニア産) を買ってきた。それから2日くらい、手の中でレモンを転がしている。確かに落ち着く。梶井基次郎は正しかった。ざらざらした肌触りが意外と気持ちいい。鮮やかな黄色は見るだけでほがらかになるし、適度な重みと冷たさがあり、ほのかに香る。紡錘形で持ちやすい。皆様も落ち込んだ時はぜひ、レモンを手の上で転がしてみてください。落ち着きます。