画板が戻ってきた

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丸の内KITTEの屋上で東京駅を描いている最中、お気に入りの画板をウッドデッキの床下に落としてなくしてしまったのですが、KITTEの皆様が見つけてくださり、無事に手元に戻ってきました。嬉しいです。ほっとしました。

以下、ことの顛末の備忘録です...。

 

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ちょっと大きめの東京駅を描いている時、画板をブロック水彩紙の下に敷いてから「さすがに狭いな」と思って、使うのをやめて足元に立てかけた。それからしばらくして、描いている最中にバランスを崩して、足元の画板をパーティションに向かって蹴ってしまい、ガラスに「バシッ」と張り付けてしまった。

次の瞬間、目の前から画板が消えた。

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いきなり消えた。そのあと下の方から「カランカラン」と音がした。見たら、パーティションの金属部分とウッドデッキの継目あたりに細い隙間があった。ここから吸い込まれて、ウッドデッキの下に落っこちてしまったらしい。

動揺しつつ、とりあえず絵を描き進める。画塾展に持っていく都合、きょう明日で完成させなくちゃならない。

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夜10時、屋上閉鎖の声をかけにきた警備員さんに相談する。

「ウッドデッキの下にものを落としてしまったんですが、ここに落ちたものは手元に戻りますでしょうか」

「ちょっとわからないですね...」

「...  (ショックで声が出ない) ...」

「何を落とされたんですか」

「画板です」

「画板」

「ウッドデッキの下はどうなってるんですか。ものは取り出せるんでしょうか」

「管理用のコンクリスペースがあります。管理会社さんだけが入れる場所でして、私たちは入れないんです。見つけたら防災センターで預かります。私から話は通します」 

この警備員さんが、しばらくしてから、いきなり振り返って「期待しないでくださいね!」とおっしゃったのが印象的だった。

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絵が描きあがり、額装してギャラリーび〜たさんに搬入する。

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そのあとKITTEに行って、まずKITTEの防災センターに電話する。画板について尋ねたら「管理会社の方で探しましたが、見つからなかったようです」とお返事を頂く。落ち込む...。だけど、防災センターの方が探してくださっているのが嬉しかった。「遺失物届出書を書いてください」ということで、地下1Fの防災センターに行き、届出書を書く。

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び〜たさんでの在廊の日、またKITTEに行く。

屋上から東京駅を描く時「左端(0番)から数えて9番目と10番目の柱の間」と位置を決めていた。柱を数えるといつもの場所がすぐわかる。

描いていた場所に行って、ウッドデッキの隙間から下をのぞいてみた。

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あった!思ったより浅い位置にある。

隣に「はとバス」の半券が落ちていて、東京を感じた。

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通りかかった警備員さんに相談する。

「遺失物の届けをした者ですが、どこに落ちているかわかったんです。取り出せるか教えていただきたいです」

「防災センターに聞いてみます。少々お待ちください」

電話中の警備員さんが途中で悲しい顔になり、答えを察してしまう。

「やはり今はちょっと難しいとのことです」

「何とか伝えて頂けませんか。以前にも探していただいていて "見つからなかった" とお返事を頂いているんですが、今見たら場所がわかったんです。9番目と10番目の柱の間のところでして」

警備員さんは真剣に話を聞いてくださり、しばらくして「ご納得頂けましたでしょうか...」とおっしゃった。しんみりした。お礼を言ってギャラリーび〜たに行く。

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それから数日、正直あきらめていたところ、KITTEの防災センターから「見つかったので取りにいらしてください。」とお電話を頂いた。

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本当に嬉しかった。。。。。。

地下の防災センターに行って、遺失物届にサインして受け取った。書類の中に、管理会社さんや作業担当者さんの名前が詳しく記載されていた。お手間をお掛けしました...。KITTEの皆様、警備の皆様、ありがとうございます!!

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KITTE丸の内。東京中央郵便局の跡地に立つ日本郵政の商業施設。昔は鉄道で郵便物を運んでいたので、駅のすぐそばに郵便局の建物があったそうです。

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画板をウッドデッキの下に入れてしまったあと「自分の執着を土地に埋めてしまった」ような感覚があり、なんだかずっと気持ちが落ち着かなかったです。画板が手元に戻ってきて、本当に安心しました。

冬の間はあまり移動せず、身近なものを描きます。

 

東京駅

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東京駅 (33.2 x 24.2 cm)

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東京駅は「特別になろうとした駅」だと思う。

1914年、日本がいわゆる「西洋に追いつけ・追い越せ」をやっていた頃、国家の威信をかけて建築された。八角のドームのあたり、完全な西洋風でない謎の趣がある。 建築探偵・藤森照信先生は「ヨコヅナの土俵入りを写したもの」と著書に書いていた。私もそんな気がする。八卦良い、というか、張ったり、というか。

全体のフォルムはやたらボコボコしている。窓枠の模様はブロックごと、1,2,3階で細かく違う。あちこち謎めいた飾りがあって、横全体に白いラインが走っている。この特徴を余すところなく描こうとすると、それなりにつらい。全部水彩でやろうとすると、相当つらい。何回か、のっぺりしたまま仕上げてみようとして、失敗した。一気に「らしく」なくなってしまう。東京駅はボコボコしている。ボコボコしてるのが東京駅みたいだ。

描いているとき、何かの「執着」と向き合っている感覚がする。国家の執着、建築家の執着、どこかからやってきた全然違う何かの執着、何よりも自分自身の個人的な執着。そういうものが徐々に混ざって、だんだんおかしくなってしまう。

 

東京駅

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東京駅 (F8: 37.9 x 45.5 cm)

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今日閉場した、ギャラリーび〜たでの横浜画塾特別展で展示した絵。無事閉場しました。(Webで展示の様子をご覧いただけます。:  横浜画塾 水彩画特別展 ) ありがとうございました。

 

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形が不安定で、額装してやっとギリギリ完成っぽい...。

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正直、描いているとき苦しかったです。この1枚を仕上げる中で、テクニカルな学び、充実感、いつも使っている絵の具の新しい表情、その他、覚えたことや手に入れたものが相当にたくさんありました。とにかく仕上がって、持っていけて良かったです。

 

11月の光

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スケッチ (33.2 x 24.2 cm)

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横浜画塾展のプレオープン前、東京駅の八重洲側を歩いているときに見た。

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絵みたいな光だった。写真を撮った時にはもうなかった。こういう光を持って帰りたくて、透明水彩を持ち歩こうと思ったんだった。

横浜画塾特別展がオープンした。昨日のプレオープンは塾生2人で迎えた。展示参加者は高齢の方が多く、都心方向には向かいづらいと思う。どうか状況が穏やかになってほしい。

 

「横浜画塾 水彩画特別展」参加します

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横浜画塾・笠井一男先生の教室の「横浜画塾 水彩画特別展」に参加します。11/19(木)-24(火) ギャラリーび〜た (東京・京橋) 11時-16時 (火曜は15時まで) です。

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私は「笠井先生の自転車」と「東京駅」を展示します。

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ギャラリーび〜たさんでは様々な対策がなされていますが、状況が状況のため、どうかご無理のない範囲でお越しください。インターネット展示も同時開催されます。ぜひご覧ください。(http://travelplan.co.jp/gajyuku/)

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*11/23(月祝) の13:30-16:00 会場におります。

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ギャラリーび〜たさんは海外スケッチツアーを主催されている旅行会社「トラベルプラン」さんのギャラリーです。今回、一度閉廊するそうです。こちらの会場で、素晴らしい水彩画の展示をたくさん拝見しました。そして「自分もいつかここで絵を展示できたらなあ...」と思っていました。今回教室展で絵を飾らせて頂けることになり、とても嬉しく、そして、閉廊を悲しく思います。またギャラリーがオープンした際、お伺いできればと思います。

 

旧横浜港駅プラットホーム

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旧横浜港駅プラットホーム (42 x 28 cm)

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横浜画塾・笠井先生の教室のスケッチデーだった。良く晴れた素敵な一日だった。

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赤レンガ倉庫の裏手にある。横浜港 (みなと) 駅は、横浜港に停泊する船と鉄道網との接続点だった。いろんな人がここから船に乗って、どこかに出かけたんだろうなあと思った。

 

東京駅

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東京駅 (33.2 x 24.2 cm)

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相変わらずKITTEの屋上庭園から。

隣の男女2人が「ビルの明かり、残業してる人達の明かりなんだよな...。そうだ、残業をロマンチックに言い換えたら、何になるだろう?」「"有志のつどい" はどうかな」「無理やりやらされてるんじゃないのかな。でも、"有志のつどい"、それもまた一つの答えかもしれない」とか話していて、描きながら笑ってしまった。

スーツケースを引いた人たちが多い。じっと駅を見ている。



小さい駅

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小さい駅 (はがきサイズくらい)

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西武多摩湖線・青梅街道駅。すごくローカルな雰囲気がある。

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だいぶ前、用事があってこの駅で降りたとき「いいなあ。スケッチしてみたいなあ」と思ったけど、しなかった。きょうは描いてみた。Fabrianoのラフブックがとても使いやすい。かなり薄い紙なのに、ペンも水彩もしっかり固着する。

最近、やろうとかやってみたいとか思っていて、でもずっとやっていなかったことを少しずつやっていっている。 

 

旧原宿駅

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旧原宿駅。新しい方の原宿駅の改札内側から。

インスタグラマーのJohn先生から「描いてよ」とリクエストをもらった。最初、John先生が撮った写真を送ってもらったけれど、色々見えないところがあったので現地に行ってきた。線を描いて、持ち帰って色を置いた。

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解体用の足場が組んであった。

  

横浜赤レンガ倉庫

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横浜赤レンガ倉庫 (22.7 x 15.8 cm)

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夕方の時間に行った。長い影がきれいだった。絵みたいだった。ああ、本当にこういう風に影が落ちるんだと思った。

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駅で、港で、日本の近代物流倉庫で、廃線跡。日本と世界との玄関口。みなとみらいはもっと描きたい。ここは私の好きな場所だ。かつて重要な役割を担って、今はその役割を終えた場所。描きたいことがたくさんある。

 

東京駅

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東京駅 (20 x 20 cm)

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南側ドームの真正面。丸の内ビル4Fのカフェから見られる。

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まだ日が暮れる前、簡単にスケッチをとっている時。日が暮れた後はガラスに部屋の反射が写り込んで、よく見えなかった。次は外に出て描いた方がいいな。

 

 

東京駅

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東京駅 (51 x 36 cm)

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東京駅を描きに行った。

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交番の真正面だった。おまわりさんがずっと進捗を見守ってくださった。

いつもより大き目の紙 (F8) を持っていった。「イーゼルなしでも、手持ちで何とかなるかな」とぬるい考えで持っていったら、全く何ともならなくて、描いてる最中ずっとオタオタした。正直きびしいたたかいだった。そういう"きびしいたたかい感"が絵に入った気がする...。紙の大きさは少し考える。細かいところはいつもより描きやすかった。

また描きに行く。