好きな色の答え方

人から「好きな色は?」と聞かれるとき、

ガンボージの黄色。しかし残念なことに草木から取った本物のガンボージの色を知らない。ガンボージは有毒かつ退色しやすいため、現在は使われていない。画材製造各社で代替品が検討されている。自分はウィンザー&ニュートン社が安定な有機顔料2種を混合して新造した「ニューガンボージ」を愛用している。ホルベイン社の「ガンボージノーバ」は安価で手に取りやすいが黄色・赤色ともにウィンザー&ニュートンと異なる有機顔料で調合されている。呈色の様子も水に溶かしたときの挙動も全く異なる。比較的平面塗りがしやすい利点がある。用途に応じて使い分けるのが良い。

というフレーズが湧いてきます...うんちくまみれな上妙にえらそうでいやらしい。「黄色が好きです。あなたは?」と答えれば、それで話は終わるのに...。それでも自分はこの色がとても好きで、とにかく色々調べてしまったために「好きな色は?」と聞かれたときはいつも、頭の中でひととおり上の文句を唱えています。

「内観の色を言葉で表現する」というのは古来から非常に難しい問題のようで、哲学分野でもよく「あなたの見ている赤と私の見ている赤は本当に同じ赤なのだろうか」という問いが取り沙汰されます。自分も長らくこの問題について考えたことがあり、いわばこの問いがきっかけとなって神経科学分野を専攻したのですが、最終的に「全ての問いに答えを出す必要はない」「言葉で説明できないことはたくさんある」と思うようになりました。

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らくがき: 水彩の試し書き。黄色い部分がウィンザー&ニュートンの「ニューガンボージ」。新しい色の絵具を買ったときは、手元にある色と混ぜてどんな時に使うか考えます。