アトリエ・サルバドールの冒険

水彩絵描き・ますとみけいのBlogです。

デビッド・マー「ビジョン」

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2008年、アホな大学院生だった私は、神経科学者デビッド・マーの「ビジョン」を読んで「知るべき脳の全てはこの本の中に書いてある」と思い込んだ。 

ビジョン―視覚の計算理論と脳内表現

ビジョン―視覚の計算理論と脳内表現

 

デビッド・マーはイギリスの神経科学者。1945年生まれ。生理学、心理学、計算機科学など幅広い分野に精通し、MIT心理学科の助教授として視覚研究を進めた。「ビジョン」執筆中に白血病の診断を受ける。1980年に35才で亡くなった。

デビッド・マー - Wikipedia

当時参加した若手研究者のワークショップで、講師の先生がこの本と、デビッド・マーが提唱した「脳を理解するための3つのレベル」を紹介してくださった。気になってAmazonで本を手に入れた。

確かに冒頭で「脳を理解するための3つのレベル」がまとまっていた。以下の3つが分かると、脳が分かったことになるらしい。

  1. 脳の計算の目的は何か。なぜその計算が適切なのか。目的に向けた実行可能な方法とは何か。[計算理論]
  2. 計算理論はどのようにして実現できるか。特に入力と出力の表現は何か。変換処理のためのアルゴリズムは何か。[表現とアルゴリズム]
  3. 表現とアルゴリズムは、どのようにして物理的に実現されるか。[ハードウェアによる実現]

まとまっている。何だか分からないけど、3つにまとまっている。難解な脳のことが、あっさり分かる気がしてくる。デビッド・マー、すごい。調べるべきことがこんなにクリアにまとまっている。脳の研究はどんどん進むだろう。むしろ、なんでまだこんなに進んでないんだろう。この本はすごい。きっと他にも知るべきことが書いてある。読破すれば、すごい研究者になれそうな気がする。

私は「ビジョン」を読むことにした。蛍光マーカーを片手に内容を追った。序盤から数式。謎のグラフ。「原始スケッチ」「ゼロ交差」「2と2分の1次元スケッチ」...聞きなれない単語が次々現れる...。だんだん、読むのが辛くなって、とりあえず本のページをぱらぱらめくった。

すると、後ろの方のページからこんな図が現れた。

 

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...

らくがき ?

 

もう少し図を見る。

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だいたいの "もの" は真ん中に軸がある、ということらしい。

 

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円筒で作る動物。かわいい。つみきみたいだ。

 

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なんだろう、美術の参考書で見たような。

 

 ...

 

図を見ているうちに、妙な直感が降りた。

絵を描く人」は、この本の中に書いてあることを「知っている」気がする。

 

根拠のない直感としか言いようがなかった。でも図を見るたび、そういう気持ちが強くしてくる。この本は「絵を描くこと」と関係する。「絵が描けたらなあ」と思った。絵が描ける人なら、何が書いてあるのかすぐ分かりそうな気がする。とにかく、この本には、間違いなく自分にとって非常に重要なことが書いてある。何度も読んで自分のものにしたい。そうしたらきっといいことがある。

...

そう思って、今も「ビジョン」を読んでいる。飲み込める場所が少しずつ増えてきた。 外に出るのが難しい時期、難しい本と因縁があるのは幸せなことだと思った。

結局、先の直感が正しかったのかは正直なんとも言えないのですが、今後、絵描きから見た「ビジョン」のことを書いてみたいと思っています。分かるところから少しずつ書いて、Blogに放り込みます。

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*日本語版「ビジョン」の翻訳者・乾俊郎先生の解説論文が読めます。[pdf]

https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej1978/42/9/42_9_911/_pdf