アトリエ・サルバドールの冒険

水彩絵描き「ますとみけい」のBlogです。作品・お知らせ・雑記・らくがきを投稿します。

トマス・モア「ユートピア」

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トマス・モアの「ユートピア」を読んだ。

「ユートピア」という単語の語源と聞いて、前から気になっていた。 1516年出版の本。この頃日本は戦国時代をやっていた。1543年鉄砲伝来、1549年にザビエルがキリスト教を伝えに来ている。

ユートピア (岩波文庫 赤202-1)

ユートピア (岩波文庫 赤202-1)

 

一通り読んで、この本は「ぼくのかんがえた最強の国家」の設定を書き連ねたものと理解した。

一応の筋立てはある。トマス・モアと思しきイングランド人が旅行先で出会った船乗りから「ユートピア国」という南方の国家の話を聞く。船乗りはユートピア国の素晴らしき社会制度、秩序立った生活、聡明な人々の様子について (文庫本一冊分にわたって) ひたすら褒め称え続ける。法制度、財産制度、教育制度、医療制度、奴隷制度、戦時体制、宗教制度... 考えうる限りの制度という制度について、詳細な設定が用意されている。幼い頃から高等教育を受けたユートピア人は、制度に従い秩序立った人生を送る。彼らが何を考えているかについては、ほぼ記述がない。

印象に残った設定をいくつか書くと

- 「金銀・貨幣は不潔なものであり、尊ぶことで災いがもたらされる」という感覚を養うため、ユートピア人は子どもの頃から金銀で便器や奴隷を繋ぐ鎖を作ることを覚えさせられる

- 結婚する者たちは、思慮深い有徳の長者の介添えで互いの裸体を見せ合うことになっている。何か気に入らないことがあった場合、この時点で相手に告げなければならない。また夫婦の契りを破壊した者は奴隷刑に処される (しかしユートピア人達は愚かではないので、そのような事態は滅多に生じない)

- 他国と戦争が起きた際には、ザポレット人という別国の人間を雇って戦線に送る (彼らは生まれつき頑健で、美食を好まず、粗末な生活をしており、ただ戦争するために生まれてきたような人間達なので、丁度良い)

- ユートピア人は知力・精神性ともに優れており、全ての戦争に勝つ

ぼくのかんがえた最強の国家」なので、ご都合主義も全て許される。

トマス・モアはイングランド王国有数の法律家だった。国を代表する専門家として、国内外で起きる大小様々の揉め事に対応しているうち、現実が嫌になったんだろう。「Utopia」という言葉は「どこにもない」と「良い」の音を組み合わせてモアが作った造語だという。「こんな国絶対ありえない」なんてこと、書いた本人が一番良く知っている。1534年、モアはヘンリ8世の離婚に反対したかどで王から反逆罪を言い渡され、翌年斬首刑に処されている。

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自分の妄想をまとめて世に出しておくと、後の人々に伝わって、妄想の実現の可能性が少し上がったりするのかもしれないとも思う。